スクランブルのK
1996年。大井のスーパーオトメ号が首都高速を走り話題になったが、同じ年に県競馬でも三条競馬場から競走馬が逃走、国道を走るという珍事があった。確かホクエツローマン(?)という馬だったと思う。私たち記者は競馬場にいながら気づかなかったが、夜のニュースでは「競走馬が三条市内を駆け巡る」と報道された。
新聞を作成していると、後輩のN記者の本命馬に出走投票がなく、欠馬になったことがあった。あらかじめ◎をつけていた馬が休んだ場合は、対抗の馬を◎に、単穴を○に…というように予想を変更するのが普通だが、その日はなんとなく「どうせNの予想だ。何でもいいや」と思ってしまい、校正しやすい大外枠の人気薄の馬に◎をつけてしまった。そのレースはアラブのオープン競走だったが、その◎をつけたヤングトウザイオーはA2クラスでも苦戦していただけに、ちょっと無謀な本命だった。でも、「もともとNは穴予想だし、いつも当たらない予想なので問題なし」と決めつけてしまい、そして新聞は完成した。翌日、私が競馬場の記者席に行くと、恐持て上司がN記者に向かって怒鳴り声を上げていた。「N、何でヤングトウザイオーが本命なんだ!説明してみろ!」。当時、Nは新米記者だったので上司に反論することができず、ただ「すみませんでした」と言うばかり。私の仕業に気づいていたNは怒られながら、時折こっちに視線をおくり「真実を述べてください」というような顔をするが、あまりにも激しく怒る上司の顔を見ていたら怖くなり、つい本当のことが言えなくなってしまった。それ以来、N記者からまったく信用されなくなった。